院長ブログ

2022-12-13 08:05:00

歯科医師の使命㊾

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 先日、日本補綴歯科学会から学会専門医の認定を更新していただきました(写真)。約4年前にもこのページでご報告しましたように、歯科の各学会では歯科における専門医としての認定を行っています。それには指定学会への参加、学会発表、学会誌への投稿、そのほかの学術活動などの実績を単位として、規定の単位数を取得すれば認定の更新を受けることができます。更新は5年に1度ですのでその間に必要な単位を取得しなければなりません。

  さて、この5年間コロナの影響で学会の出席はほぼリモートでした。考えようによってはわざわざ開催地に出向かなくても自宅で参加できますから経費はかからないし、時間の節約になりますから楽といえばたいそう楽です。しかし旅や鉄道が好きな自分としては以前のような珍道中を経験することもないので、かなり欲求不満です。学会でギラギラした他の歯科医師の眼力や、発表に対して容赦のない質問に触れると向学のスイッチが入ります。また学会が大きな会場の場合、各歯科メーカーが広いフロアで様々な新製品を展示しており、試供品やカタログなどもたくさん提供してくれてましたから、新しい製品の風に吹かれることによってテンションのネジはぎりぎりと巻き上げられたものでした。それに大学の同級生や先輩、後輩に久しぶりに会うことも多く、学術的な利益以外の価値は大きいです。

 コロナ最盛期のころ全世界でリモートによるビジネスを推奨したことで感染予防にはよかったんでしょうが、同僚と細かいやり取りが即座にできない、親睦が図れない、上司に怒られることがなく張り合いがない、などのネガティブな要素が表に出てきましたが全く同感です。専門医の単位はもらえてもメンタル的な満足感や充実感に乏しい感じです。聖書の「人はパンのみにて生るものにあらず」とかアリストテレスに由来する「人間は社会的動物」という言葉がありますが、物理的な満足だけではなく精神的なそして社会的な満足が大事だということですね。

歯科医療で言えば人を相手にする仕事ですので、患者様の訴えを聞いた瞬間から説明もなく黙々と治療し、終了後「はいこれで」とお返ししたら、いくら完璧な治療でも患者様側にも歯科医師側にも絶対不満足感が残ります。そもそも私の治療スタイルには合いません。

かつて神戸の学会に出席したとき、阪神タイガースの旗だらけのたこ焼き屋でビールを飲みながらたこ焼き食べた時、「こんなうまいもんを阪神ファンは食っているのか!?」と嫉妬したあの普通の生活様式に戻りたいですね。