院長ブログ

2020-02-21 23:50:00

月見草散りぬ

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 嗚呼、もうあなたの「考へ」を聞くことができなくなりました。なぜあのピッチャーがあの時あのコースにあのカウントであの球種を投げたため敗戦投手になったのか、なぜチャンスの時、代打に出すつもりもないバッターをネクストバッターズサークルで素振りをさせたのか、なぜ草野選手が2球ストライクを見逃した後、逆コースのストライクをサヨナラヒットにできて、彼を天才と評したのか、そんな誰もが思いつかない理論をだれもが納得できるようにぼやきで聞くことはもうできなくなりました。
 かつて西武とヤクルトが日本シリーズで死闘を繰り広げた後、週刊誌上で両チームの監督が対談しました。その記事を読んだ時、「野球のことならなんで知ってるさ。」とヲタクを自負していた自分にとって「難しくて何言ってんのかわかんねえ。」と自分の浅学さを思い知らされたことを覚えています。当時の西武の監督はキャッチャー出身の森祇晶氏でしたから、野球理論の濃さでいえばマックスでしたね。
 わが楽天の監督に就任直後、ラジオでとある野球解説者が「頭使うだけで勝てるほど野球は甘くはないです。」と言ってましたが、今では「頭を使わなければ勝てない。」のが常識となっています。また多くの著書を書いてますが、よほど野球のデータばかりが掲載されてるのかと思いきや、そのへんの啓発本を圧倒するほど供覧に値する内容ばかりでした。「人は変わらなければならない。しかし変わろうとしないのには3つの理由がある…。」「残すべきものは財産ではなく人だ。」などいまの自分の私生活あるいは仕事でとても刺激になっていることは言うまででもありません。もちろん今のプロ野球を見渡してもその教え子たちであふれています。侍の稲葉監督しかり、楽天の三木新監督しかり、ヤクルトの高津新監督しかり。江本孟紀氏、江夏豊氏、古田敦也氏、石井GM…。
 もう一つ。パ・リーグ、とくにかつての南海なんかはスター軍団の巨人と比べればカスみたいなものでした。ドラフトで巨額の契約金で入団したエリート選手と比べれば、テスト生入団でクビ寸前までも経験した一兵卒なので、セ・リーグ特に巨人に対する競争心は尋常ではなっかったことは超有名です。ですから昔から傲慢でわがままな巨人に反発してきた私にとって、巨人のONを試合で苦しめマスコミでいじるのを見るのが痛快でなりませんでした。よく「天才は1%の才能と99%の努力」と言われますが、『ONは天才だから』と評してた本人が実は最強の天才だったのではないでしょうか。
 楽天が初のCS進出したのにもかかわらず監督の契約を延長してもらえなかったのは、故野村沙知代夫人と球団との折り合いが悪くなったためという話がもっぱらですが、夫人が全てお世話していたので、先に亡くなってしまったことから「一人で大丈夫かなあ。」と思ってました。やはり男寡ではなかなか大変だったのでしょうね。最近は確かに目に見えて衰えていましたし。とにかくがっかりです。
 野村克也さん心よりご冥福をお祈りいたします。