院長ブログ

2019-05-15 21:08:00

歯科医師の使命㉘

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 11日の土曜日は栗原市歯科医師会の令和元年度第1回学術講演会が志波姫のエポカ21(写真)で開催されました。演題は「顔面骨格形態の診断と外科的矯正治療」で、講師は東北大学大学院歯学研究科、顎口腔矯正学分野教授の溝口到先生でした。歯科矯正、いわゆる歯並びを治す治療というのは見た目を良くするという意味もありますが、口の機能を改善するという大きな目標があります。それを歯を抜く、削る、かぶせるといった歯の形を変える手段ではなく歯を移動させて実現するといういわば流派の違う治療ということになります。当然矯正歯科の専門医はかなりの専門知識を必要とされますので、我々一般開業医にとっては勉強になることが多いですね。
 この日の講演では矯正歯科学の変遷と進化についてお話しいただきました。その中での一番の革新は、矯正歯科の基本は動かしたい歯に対して他の歯を支点にして力を加えます。すると力がかかった歯は動きますが、支点となった歯も必ず作用反作用で動いてしまう。しかし現在では矯正用のインプラント(人工歯根)をあごに埋め込み、それを支点に歯を動かすようになったため、他の歯の無用な動きがかなり少なくなったことです。また現在でも矯正用のワイヤー(歯にかける針金)は、人(歯科技工士)の匠の技で曲げていますが、今ではなんとコンピュータが設計を読み込み、機械が曲げてくれるそうです。いやはやどこまで進化するのでしょう。
 そして本題は顎顔面形態の診断についてと外科的矯正治療についてです。歯並びだけを治すのであれば歯を動かすだけで済みますが、例えば上あごに対して極端に下あごが大きかったり右や左に曲がっていると、歯だけを動かして治療するのは不可能です。それには下あごをえら付近で切り(顎切)、奥に引っ込ませるという手法をとります。それにはあごを切った後の歯並びを予想して矯正し、手術後仕上げの矯正をして終了します。一般に歯科矯正は健康保険適用になりませんが、顎切の多くは顎変形症なので保険適用になります。顎切そのものは私が学生時代から行われていましたが、現在のすごいところは診査、診断、治療後のシミュレーションまでコンピュータが管理するということですね。あごを奥に引っ込めるとどんな顔貌になるかをコンピュータがCGで予測します。こうなると患者さんも術後の自分の顔をイメージしやすいですね。
 この点に関して興味深いデータを示していただきました。CGで同一女性の下あごだけを前後に動かした場合、どの程度の下あごの出具合が最も美人に見えるかという問いについて、男性から見ると下あごがやや引っ込んだ方が、女性から見るとやや出っ張ってるほうが美人に見えるというものです(写真)。しかし、日本の女性が最もなりたい顔の女性と言われているのは北川景子さんですが、彼女は整形疑惑があるほど下あごが小さいので、女性は下あごの出具合だけでは決まらないと思いますがね。
じゃあいい男の場合は何で決まるかといえば、腹の出具合でしょうか…。