院長ブログ
芸術か 第二芸術か
ゴールデンウィーク前半は用事があって東京に行ってきました。
以前東京の知人が、『GWは東京の人間がみんな地方の行楽地に行ってるから誰もいないんだよ』とのたまっていたので、じゃあちょっと観光してみようかなと東京国立近代美術館工芸館で開催されている工芸館開館40周年記念所蔵作品展「名工の明治」をのぞいてみました。国立近代美術館工芸館というくらいだから近代的なビルに囲まれたアーティフィシュアルな環境にあるものとお思いでしょうが、実は旧近衛師団司令部を改装した建物の中でした。太平洋戦争以前から近衛師団は存在していましたので、物々しいイメージを連想しましたが実際には外観だけで中は全く普通の美術館でした。
さて、工芸品は昔から「工芸」であり「芸術」ではありませんでした。一時期日本ブームの時代もあり組織的に展示された時もありましたが、かつて俳句が桑原武夫に『第二芸術』と揶揄されたように、どうしても芸術とは認められてもらえず、やがてちりじりになってしまいました。しかしその地位もいまでは少しずつ向上しこのような近代美術館に集積され展示の運びとなったようです。
展示してある作品は明治時代の名工たちが製作した彫金、花瓶、壺、屏風、木工品、皿、箱、着物、掛け軸、籐の椅子などなど多岐にわたっていました。どれも『これで芸術では無いのか!?』と驚嘆するものばかりでしたが、特に目を引いたのは本展のポスターにも使われている鈴木長吉氏作の「十二の鷹」でした。これは様々な金属を組み合わせたり鋳造や彫金、あるいは組み立てなどで作った大きさ約50センチ四方の12匹(台)の鷹です。さすがにこれらを見た瞬間その写実性の見事さ、精巧な技法、とにかくリアルな形に圧倒され開いた目と口がふさがりませんでした。
我々の歯科治療は現在でも金属で製作した銀歯に頼っていますので、金属だろうがなんだろうがほとんど生体の形に近い義歯を作らなければ歯医者の仕事とは言えないのではないかと実感させられました。それにしても「十二の鷹(ホークス)」は良いですが、われらが鷲(イーグルス)はどうなってんでしょうね・・・・・。