院長ブログ

2017-05-28 12:15:00

歯科医師の使命⑯

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 先週の23日は築館の市民活動支援センターに栗原市内の2歳半の幼児の歯科健診に行ってきました。総数20名の子供さんたちを私ともう一人の歯科医師で行いました。まだ生後2年半ですから虫歯ができるのはかなり特別のことと考えられます。この年齢でよく見られるパターンとしては、母乳や哺乳瓶をついついやめることができず上あごの多数の歯がむし歯になっている場合と指しゃぶりが始まって指にタコを作り、上あごの前歯が出っ張ってきてしまっている場合です。今回私が担当した子供さんに、このような虫歯があったり口腔内に何らかの問題があるケースは特にありませんでした。
 さて近年子供たちのむし歯保有率はどんどん低下しています。文部科学省によりますと(2016)、ここ約10年間では12歳児のむし歯保有数が約2本から約1本へとかなりのスピードで減少しています。これは大いに評価されるべきでしょう。ですから昭和の時代に、夏休みになると学校から渡された健診票を持って歯科医院に子どもたちが押し寄せたことなど少子化も相まってまさに遠い昔のことですね。
 ではこれで子供たちの歯の健康は安心できるのかと思いきや必ずしもそうではないような気がします。どうも子どもたちの口の中も『二極化』が進んでいるようです。先日の神戸新聞によりますと虫歯の多い子は家庭の経済的な問題で治療されていない場合が多いと、経済的格差による治療の有無が指摘されてました。しかし問題はむし歯が発生する過程や原因であって、むし歯ができたらお金をかけて治せばよいという結果論的な議論ではないと思います。実は中学校の健診などでは一人平均のむし歯保有数が平均1~2本ですから、たとえば1本の子がいたかと思えば0本の子がいてその次に2本の子がいるというのではなく、ほとんどむし歯の無い子が続いたかと思えばいきなり10本虫歯を持っている子がいるという極端な状況が必ず見受けられます。そうしますとやはりそういう格差的なむし歯の子を平均的な水準に引き上げてあげなければ歯科健診している意味がないと思います。
 以前書きましたが(2016.4.14)、極端にむし歯の多い子には、その背景や生活環境に是正すべき点がかなりの確率で存在します。我々の健診がそういう歯そのものの健康だけではなく、その子に関連した周辺の環境改善に何とか役に立ってもらいたいものです。