院長ブログ

2016-11-17 09:02:00

「イケメン」で「時代おくれ」

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 西武の岸投手がFAの権利を行使して楽天に入団することになりました。東北学院大学出身の岸投手はプロ野球の西武に入団し、新人当時は新人王争いであの田中マー君との争いになりました。勝利数、防御率、奪三振数、完投数、勝率などいずれをとってもほとんど差がありませんでした.しかし大卒の岸選手に対し高卒のマー君のほうが能力が高いということで新人王になれなかったような気がします。ただ裏を返せばマー君と同じスペックのすごいピッチャーだということになりますが、ではなぜドラフトで岸投手は楽天に入団しなかったのでしょう。
 もともと岸投手は西武のスカウトが若い時期からマークしてバックアップしていました。新興球団の楽天にしてみれば若いアマチュア選手にスカウトを張り付ける余裕なんかあるはずはありません。本当は岸投手も楽天に行きたかったけれど、お世話になった西武のスカウトに相当恩義を感じていたんでしょう。後ろ髪をひかれる気持ちで西武に行ったのだと思います。
 そして西武に入団して1年目から大活躍。2年目、巨人との日本シリーズではMVPを取りました。スライダー全盛の時代にあんな曲がるカーブを投げられたら巨人の打者は誰だって『なんじゃこの球!?』と言って打てるわけないですね。このシリーズでは先発なのにロングリリーフでも使われ、シーズン終了後のアジアシリーズでもシーズン並みの使われ方をしました。さすがに『肩は大丈夫なのかなあ…?」と思いましたが何もなかったかのようにシーズンオフを迎えました。現楽天の与田剛ピッチングコーチが中日時代当時の星野仙一監督から、投げろと言われれば肩痛でも150キロを連発したように黙々と投げ続けたのでしょう。この年、すべての日程が終了したとき、スポーツキャスターが一年の感想を聞いたとき初めて『疲れました・・・。』とぽつりと答えてました。
 この人に義理堅く、命じられたら黙々と投げ続ける姿というのはもともとプロになって当たり前のエリートキャリアを歩んできたわけではないせいか、野球人である前に東北人だということでしょうね。そしてやっと西武での義理を果たし、正当な権利を行使して楽天来ることができました。楽天にしてもこれまでずっと『ほんとは東北楽天が一番似合うのに・・』と思っていたはずです。私自信としてものどのにつかえがとれた感じです。
 そこで思い出すのは何年か前に紅白歌合戦で故川島英五さんが歌った『時代おくれ』という歌です。その歌詞には『♪妻には涙を見せないで、子供に愚痴を聞かせずに・・・・・昔の友には優しくて・・・・人の心を見つめつづける時代おくれの男になりたい。』とあります。岸投手はイケメンですが昭和のにおいを感じさせる『時代おくれ』の男なんでしょうね。