院長ブログ

2016-04-26 08:14:00

外国人観光客は日本の何を見に来ているのか?

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 昨年日本を訪れた外国人観光客は1974万人だそうです。日本政府は2020年つまり東京オリンピック開催年には4000万人まで増やすことを目標にしているそうです。世界の人々に日本の良さを知ってもらうということはとても素晴らしいことですし、観光収入も増えますのでぜひ達成してもらいたいと思います。
 さて日本に来た外国人観光客は日本の何を見に来るのでしょう。浅草の仲見世通りでしょうか。京都の伏見稲荷大社の赤い鳥居でしょうか。戦後、日本のイメージと言えば「フジヤマ、ゲイシャ、サムライ」と言われていました。ゲイシャ、サムライはなかなか見れませんがその代わり着物は日本を明確に象徴する服飾文化として一度は見たいと思ってるはずです。
 2012年バロンドール(サッカー FIFAの年間最優秀選手)の授賞者は、男子はご存じアルゼンチンのメッシ(バルセロナ)で、女子はワールドカップを制したわがなでしこの澤穂希選手でした。スイスで行われたその受賞式での澤選手はジャパン・ブルーではなく鮮やかな水色を基調とした清々しい振り袖姿で出席しました。名だたるゴッツイ男子選手の中にあって、これが女子サッカー百戦錬磨のあの澤穂希か!とそのあでやかさに誰もがうなったに違いありません。その際、出席した選手や関係者が最も並んで写真を撮りたがったのは、かのメッシではなく振袖姿の澤選手だったそうです。
 また日本からノーベル賞の授賞者が毎年のように輩出していますが、その授賞式(スウェーデン)に出席する受賞者のご夫人方は決まって着物です。日本と言えば着物、着物と言えば日本、これらの世界的イベントはまさに世界の人々が着物に対し大きな敬意を払っていることを垣間見た瞬間だったと思います。
 本来着物は日本の文化を簡単明瞭に表現できるどこでも見られる服飾だったはずです。しかしながら今の日本では着物の存立がますます危うくなってます。先月仙台市の中心部にある老舗の呉服屋さんが店を閉めました。10年前と比べ売り上げが10分の1に減ったそうです。何らかの着物を自前で所有している女性(家庭)は大幅に減少し、人に着付けることのできる人はもちろん、自分で着付けることのできる人も激減しているのが原因でしょう。さらに成人式の着物は華美さが強調される傾向にあり、全てを自前でそろえるのは親の重い負担となるためレンタルのケースが多く、その後の人生でも着物を持たないので着る機会がほぼ皆無になってしまうことがその背景にあるのでしょう。
 確かに着物自体セットでそろえるのは金額的にかさむことも大きな問題です。しかし格安な素材の反物やリサイクルも多数存在しますし、値段と格(フォーマルか普段着か)は一致しませんので、格安でもフォーマルな着物をそろえることもできます。また一度そろえてしまえば流行や年齢に影響されにずに長年にわたって着れるのが着物のメリットですし、様々な場面で活躍できるのも大きな魅力です。やはり日本の女性には着物をもっともっと身近に着こなしてもらいたいですね。
 外国人観光客から『キモノガミタイデス。』と聞かれて、『着物ねぇ。どこに行けば見られるんだろう?ノーベル賞の授賞式かな…』てなことになってほしくないですね。