院長ブログ
歯科医師の使命59
1月19日はWeb上で日本補綴歯科学会の専門医講習会を受講しました。私は同学会の専門医ですが、学会では歯科補綴学に関する一定の研修会を受講することが義務付けられています。
今回のテーマは、「オクルーザル・べニア」、「シングルリテーナー・ブリッジ」、「エンド・クラウン」という内容です。今の補綴学の趨勢はいかにして歯を削らず長持ちするきれいな歯をいれるか、ということで、当然今回もその主旨にのっとったものです。これらをわかりやすく説明すると、昔は銀歯をかぶせることが主流で、歯のまわりを丸々と削って帽子のようにかぶせていました。厚さも金属ですが2~3ミリになるのは普通でした。ところが「オクルーザル・べニア」はセラミックなどで作るので見た目もよく厚さは約1ミリ程度、接着するセメントを使用するので被覆する部分だけをなぞるように削るだけで済みます。
また、これまでは歯を失うとブリッジと言って、やはり両隣の歯を丸々削ってつないで歯をいれるやり方がメインでした。ところが「シングルリテーナー・ブリッジ」というのはどちらか片方の歯の表面を削りますが、薄く狭くするので歯の損傷が少なく、そこに貼り付けるように支えを接着し、歯の無いところに歯をいれるというものです。もっとも現在これは前歯がメインですが。
そして今の時代は見た目やアレルギー、金属代の高騰により脱金属化が進み、白いプラスチック素材で歯をいれる技術が進んできました。しかし奥歯でかぶせ物が薄くなりそうなときは、どうしても強度のある金属に頼らざるを得ません。しかし「エンド・クラウン」はもともと神経がなく削ってある歯の中に厚みを求めるやり方で、これも金属を使用せずに済むケースが多くなります。
このような手法は、日々の臨床ですぐにでも役に立つ内容ですが、かつて自分が大学で学生を指導していた内容とは全く異なり、あの時は「平安時代」だったんだなあ…、と実感しています。
ところで新しい知識や技術は大事ですが、相変わらず新しいカタカナの英単語ばかりでなじむのに時間がかかりそうです。今年も自分の「平安時代」を懐かしむべく、同日に行われた「大学入試共通テスト問題」を見てみましたが、毎年それはもう解く前に「問題」ではなく「解答」になっています。
今年の「国語」の問題中資料で、「外来語はそのまま使った方が良いか」というアンケートで「インフォームドコンセント(納得診療)」は日本語の方が良いが、「リハビリテーション」はそのままの方が良い、という結果が書いてありました。歯科では両方の単語を使いますが、こうなると患者様への説明は外来語か日本語か考えた方が良いということですかね。また国語の最後の問題で「論語」について漢学者の皆川淇園と田中履堂が、「学問は雑多な知識に惑わされないように、基軸となる要点を把握するべきだ。」、「多くの書物を乱読するよりも一冊の書物を隅々まで深く理解することが大切だ。」と論じています。しかし特に医療のような科学の場合は、新しい技術や知識に順応するためには多くの書物や文献を見る必要があるのではないか、と自分は相反する考えに到達しましたがいい勉強になった一日でした。